天王星に到着した【宇宙空母クラウド】だったが 地形が傾いているため着陸は困難を極めた。
この星では地上よりも上空のほうが発展しているらしく、 空飛ぶ鳥人が進化を遂げていると【司令官ランピュータ】は解析している。
しかし実際は荒野に枯れた木々が立ち並び【献ケツ】という変種な虫が飛び回っているだけだ。
着陸する場所を探すため低空飛行で星の上空を飛び続けていると、 見覚えのある顔が・・・
「あれはサンイーグル!?」
乗組員達全員がそう思ったが、 ここまでの道中<因子>を持つ似た者同士をたくさん見てきた。
今回も同じ顔した別人であろうと落ち着きを取り戻す。 しかしよく見ると、地上の木々に襲われているようだ。
「撃ち方用意!」
敵か味方かわからないが、とりあえず威嚇射撃で木々周辺を攻撃せよと【司令官ランピュータ】は指示。 【宇宙空母クラウド】から光線が発射され逃げ出す木々。
「いや~助かったありがとう。コンテストの下見にきたところを吸血木に襲われて戦ってたんだよ」
と爽やかに礼を言う彼の名は【因子ホーク】。
飛ぶ速さを競う鳥人間コンテストの開催地を 調べにきていたそうだが【吸血木】と【献ケツ】が増えすぎて、 外出禁止のうえコンテストも中止になりそうだと爽やかな顔と裏腹に悩んでいる様子。
元は単なる木々だったものが、ここ最近、吸血種【BANパイア】が大量の吸血木 を植えてしまい【ニンニック】という野菜が絶滅の危機に瀕しているそうだ。
【因子ホーク】のような鳥人種にとって【ニンニック】は力の源となる食糧。だが・・・
【BANパイア】
【吸血木】
【献ケツ】
などの吸血種にはダメージを与える野菜となる。
例え困っていようとも、その星の生態系がわからないと、 おいそれと助けるわけにもいかず狂おしい。
「変な玉が落下してから吸血木の成長スピードが速くて異常に繁殖してるんだ。 中にはニンニックすら効果がない種も出てきているからね。」
何気なくもらした言葉に<天の玉>のヒントが隠されていた。
「生態系の異常も確認できた。我々は君に協力する!」
【司令官ランピュータ】は【因子ホーク】に告げると、 とりあえず<天の玉>が落ちたと思われる場所まで案内してもらった。
「ほら、あそこさ。とうかもう手に負えない数が繁殖してる…」
地上には【吸血木】の大群。空には大量の【献ケツ】。 襲われれば血を吸われてしまうが、その中心にいる女性こそ【BANパイア】だった。
「ほーら、どんどん増えて鳥人種の血液を全部吸い取るのよ~」
どうやら<天の玉>のパワーにより繁殖スピードが速くなっているようだ。 しかし【BANパイア】じたいが玉を所有している様子はみられない。
「もっとニンニックが育てられれば…このままだと鳥人種は食糧もなく血を吸われて全滅してしまう」
危機感を感じる【因子ホーク】に【サンヒミコ】が提案する。
「ニンニックを品種改良すればいいのでは?」
「すでに生態系は狂っているのだから多少は問題なかろう」
【司令官ランピュータ】も同意しクラウドの科学技術で 【ニンニック】を品種改良する計画がすすめられた。
元となる野菜【ニンニック】は地上にはなかったが、 前回の鳥人間コンテストで優勝した時の【ニンニック】を大量に保存してあると【因子ホーク】。
野菜の数は限られているため 失敗はゆるされない。何度かの実験結果のすえ 誕生したのが【キングニンニック】である。
効果は通常の数倍。これを培養して増殖し星中にバラまくと… みるみるうちに【吸血木】は枯れていき【献ケツ】の数も減ってきた。
「あぁぁ!もったいない!」
嘆く【BANパイア】であったが、こうして歪なバランスは調和を取り戻した。
「まぁ、鳥人種が困らない程度には血を吸わせてやるよ」
と【因子ホーク】がなだめるなか、枯れた木々の中に<天の玉>が輝いている。
「吸血木の中の1匹が玉を飲み込んでいたようだね」
と【ウッド王子】が玉を拾い、天王星を後にした。